【2025年最新版】放射温度計の精度を徹底解説!
~安定して測定するコツとは~
非接触で温度を測定できる放射温度計は、生産管理・品質管理・研究開発など、幅広い分野で活用されています。
一方で、「この環境で本当に正しく測定できているのか?」「このワークを測定するにはこの機種でよいのか?」といった疑問をお持ちの方も少なくありません。
放射温度計の精度は、測定対象・使用環境・設定方法によって大きく左右されます。
本記事では、放射温度計の基礎から精度を高めるためのポイント、さらに適切な選び方・使い方までを分かりやすく解説します。
正しく活用すれば、より信頼性の高い測定が可能になります。ぜひ最後までご覧ください。
目次
放射温度計とは
放射温度計は、物体から放射される赤外線エネルギーを検出し、その強さを温度に換算して表示する非接触型の温度計です。その仕組みは物質が持つ熱エネルギーに応じて赤外線を放射するという原理(熱放射)を利用しています。
接触型の温度計とは異なり、対象に触れることなく温度を測定できるため、高温物体や移動中の物体を瞬時に測定できるのが特長です。さらに人が近づけない危険な場所にも設置できるため、安全面でも優れています。
こうした特長から、自動車・鉄鋼・半導体・電気といった幅広い業界で活用されています。
放射温度計の大きな分類(ハンディタイプと設置型)
放射温度計には、主にハンディタイプと設置型の2種類があり、用途や目的に応じて最適なモデルを選ぶことが重要です。それぞれの特長を理解し、適切な製品を選択しましょう。
ハンディタイプの特長
- 持ち運びが容易で、場所を選ばずに測定できる
- 軽量コンパクトでシンプルなインターフェースが多く、片手で簡単に操作できる
- 瞬時に温度測定ができるため、素早く状況を把握できる
- 比較的安価なモデルが多い
設置型 放射温度計の特長
- 連続的な温度測定ができるため長期的な温度変動の監視や分析に最適
- アナログ信号やデジタル信号が出力されるためPLC、データロガーなどと接続して温度データを記録・管理できる
- アラーム機能もあるため、生産設備の制御に使える
- 人が立ち入れない高温雰囲気や危険な場所でも使用可能
ハンディタイプの放射温度計は、持ち運びが容易でさまざまな場所での測定に適しています。一方の設置型 放射温度計は連続的な温度測定に適しています。そのため管理・制御・トレーサビリティなどに活用されます。
用途や目的に合わせて、適切なタイプの放射温度計を選択することが重要です。
放射温度計の精度とは
放射温度計の仕様には、それぞれの機種ごとに『精度定格』が定められています。これは、一定の測定条件下で保証される測定値の誤差範囲を示したものです。
しかしながら製造現場などでは理想的な環境で温度測定できることはほとんどありません。
本記事ではそういった精度定格ではなく、実際の環境でできるだけ精度良く安定して測定する方法を解説します。
■精度を左右する主な要因
1.放射率
物体の表面から赤外線エネルギーが放射される能率を表す尺度。0~1の間で表します。放射率は物体の材質、温度、表面状態(酸化、粗さ)により変化するほか、測定波長(後述)によっても変化します。一般的に光沢のある金属面は放射率が低く、同じ金属でも表面が酸化したり粗くすると放射率は高くなります。また一般的に絶縁物は放射率が高いものが多いです。
放射温度計は放射率を適切に設定することで初めて正しい温度を測定できる計測器ですから、実際の物体の状況に合わせて放射率を設定することがまず何より大事になります。
2.測定波長
放射温度計には測定波長(実効波長)という仕様があり、赤外線のどの波長を検出して温度計測するかは各モデルによって異なります。測定波長の選択次第では物体によっては赤外線が透過してしまったり、放射率が著しく低くなる場合もありますから、物体の特性を理解し温度測定に適した測定波長を選択する必要があります。
3.標的サイズと位置合わせ(照準)
測定対象物よりも小さい標的サイズを選択する必要があります。仮に物体よりも大きな標的サイズであったり物体からはみ出た位置で測定すると正しい温度が測定できません。また、放射温度計と物体までの空間に光路を遮るものがあれば視野掛けという状態になり正しい温度が測定できなくなります。物体のサイズが小さかったり物体との距離が遠くなるほど位置合わせが困難になりますから、照準の有無や方式なども非常に重要となります。
4.測定環境条件
周辺に測定対象物以外に熱源がある場合、熱源と温度計の位置関係によっては外乱光の影響で測定温度が高めに表示されてしまいます。また塵、埃、水がレンズに付着していたり測定光路上に存在している場合は赤外線エネルギーが減衰してしまうため通常よりも低い温度指示値になってしまいます。
放射温度計の選び方
■精度よく温度測定できる機種の選び方
1.放射率設定値が変更可能な機種を選ぶ
もしくはセンサ補正機能や反射補正機能といった放射率設定値だけでは温度を合わせきれない場合に活用できる温度補正機能が充実している機種。
2.測定波長が豊富に選択できる機種を選ぶ
鏡面金属やガラス、フィルムなど普通では測定困難な物体でも、最適な測定波長を選択することで安定して測定できます。
またバーナー加熱などの炎の影響を受けずに測定できる機種も選択できます。
3.標的サイズや照準機構が豊富な機種を選ぶ
どのようなワークでも位置合わせが容易にできるようできるだけ小さな標的サイズを選択したほうが良いです。また放射温度計は接触せずに温度測定するため、離れた場所からワークのどの部分の温度を測定しているかを把握することは非常に重要です。LEDやレーザポインタで測定位置を照らすものやファインダタイプで覗きながら目で見て位置合わせするもの、CCDカメラで測定位置をとらえるものまであります。
一長一短ありますが温度測定する現場に合わせて選択します。
4.測定環境に合わせて対応できる豊富なアクセサリを選択できる機種を選ぶ
例えば溶接時にスパッタが飛んでくるような環境であればレンズを保護する窓材を付ける、光路上に塵やほこりがあればエアパージフードを付ける、高温環境に合わせて水冷ジャケットを付けるなどアクセサリを付けることで様々な環境でも安定して温度測定することが可能となります。
放射温度計を精度よく測定する方法
■精度よく温度測定するためのテクニック
●1.放射率設定について
放射率は温度、材質、表面状態、測定波長などによって変わるため文献などの資料により正確な値を導き出すことは困難です。そのため通常は以下の方法によって求めます。
①熱電対などの接触型温度計による方法
物体を測定したい温度まで加熱します。それを熱電対で測定し、同時に熱電対で測定しているすぐ横を放射温度計で測定します。熱電対で表示されている温度指示値と同じ温度になるように放射率の数値を変更します。この時の放射率設定値がその温度における物体の放射率となります。
②黒体塗料による方法
あらかじめ放射率の分かっている黒体塗料を物体の一部に塗布します(温度測定する放射温度計の標的サイズの2倍以上の面積で塗布してください)
黒体塗料を塗布した物体を測定したい温度まで加熱します。黒体塗料の仕様に明記されている放射率値を放射温度計に設定し塗布した黒体塗料面を測定します。この時の温度が正しい温度になります。
次に同じ物体の黒体塗料が塗布されていない箇所(塗布した黒体塗料面のすぐ横くらい)の温度を測定し、先ほどの正しい温度測定値になるよう放射率の数値を変更します。この時の放射率設定値がその温度における物体の放射率となります。
●2.測定波長の選択について
放射温度計の種類によって測定波長は様々ですが、測定したい物体によって適した測定波長の温度計を選択する必要があります。
①金属測定の場合
測定波長が8~10μmのような長波長の場合はほとんど正しい温度は測定できません。
金属の場合はできる限り短波長を選択する必要があります。
例:0.8~1.0μm、0.8~1.6μm、1.95~2.5μmなど
②ガラスやフィルムなど透明物体の測定の場合
物体が500μmほどの厚さがあれば8~10μmのような長波長の温度計でも測定できることが多いです。
しかしそれより薄くなればなるほど透過してしまい、ほぼ正しい温度測定ができなくなります。
そのような場合は赤外線が透過しない波長に限定した仕様を選択する必要があります。
例:ガラス用5.0μm、フィルム用3.4μmなど
③ガラスを透過して窓越し測定する場合
例えば真空チャンバーに設置されたビューポート越しに内部の温度を測定する場合はできる限り短波長を選択する必要があります。(ビューポートの材質によって変わります)
例:0.8~1.0μm、0.8~1.6μm、1.95~2.5μmなど
●3.測定距離と標的サイズについて
放射温度計を使用する場合、どの範囲を測っているのか、その位置に正しく照準できているか、というのは測定精度に直結します。
以下に標的サイズと照準機能に関する注意事項をワーク別に整理しました。
①細線、電子部品などの場合
測定対象物が細線、電子部品などの場合は1mm以下や数mmレベルのスポット径が必要になります。この場合は測定範囲を正確に確認する必要があるため、最低限としてスポット径と照準が同光軸になっている必要があります。そのうえで目で直接確認できるファインダタイプかCCDカメラ照準が最適です。同光軸になっていない場合は正しい位置合わせ=正しい温度測定は難しいでしょう。
②板材、シート材の場合
これら対象物の場合は移動していることが多いですが、ワーク自体が大きなため多少スポット径が大きくても許容されます。また照準も大まかな位置合わせで十分でしょう。
ただし端部を測定する場合は注意が必要です。
③高温金属、溶融金属の場合
標的サイズはワークサイズにより異なりますが、できるだけワーク測定面の二分の一以下の標的サイズを選択してください。曲面の場合は三分の一以下が理想です。
照準は、例えば鉄などは高温になると赤く光るため赤色レーザ(LED)照準の場合は光が同化して見えなくなります。そのためグリーンレーザなどの照準光であれば多少は見えやすくなるでしょう。さらに視認性を上げるなら直接目視できるファインダタイプかCCDカメラ照準であれば全く問題なく位置合わせができます。ただしもっと高温になって白く光りだすと目視もできなくなるため位置合わせはほぼ不可能になりますから、このような場合は温度が高くなる前(光る前)の位置合わせを推奨します。
④長距離測定の場合
測定距離が1mを超えるとLED照準はほとんど視認できなくなるため、レーザ照準を推奨します。さらに5m以上になるとレーザ照準であっても見えにくくなる場合があるため、目視できるファインダタイプかCCDカメラ照準を用いて位置合わせを行ったほうが確実です。
ただし測定環境が暗い場合はファインダタイプやCCDカメラでは対象が見えづらく、逆にレーザ照準のほうが明るく視認しやすいこともあります。したがって、測定環境の明るさも照準機能選定の重要な判断材料としてください。
●4.アクセサリの特長と使い方
①レンズ保護窓材について
溶接などのスパッタは非常に高温のため、レンズにあたるとレンズが溶けてしまうことがあります。これをそのままにしているとレンズ表面がブツブツのクレーター状になってしまいます。こうなると正しい温度測定はできず修理が必要となります。
このような場合にはレンズ先端にレンズ保護窓材を取り付けることで回避できます。
もちろん窓材自体が溶けてクレーター状になりますが、新しい窓材に定期的に付け替えることで肝心のレンズを保護し安定した温度測定が期待できます。
②エアーパージフードについて
スパッタなどの固形物は防ぐことはできませんが、工場内に浮遊している埃や塵、多少の水などがレンズに付着することを防ぐためにレンズ先端にエアーパージフードを取り付け、そこにエアーを流すことで対策します。
エアーを流す場合はコストはかかりますが水分と油分を取り除いた計装エアーを使うことを推奨します。一般的なエアーを流すとエアーに含まれている水分や油分で逆にレンズを汚してしまい正しい温度を測定できなくなる可能性があります。
③耐熱・水冷ジャケットについて
放射温度計の動作温度はそれぞれの機種で仕様に明記されていますが、雰囲気温度の高い工場などで放射温度計を使用する場合、仕様上に明記されている動作温度を超えてしまうと温度ドリフトなどが起き、たとえワーク温度が一定でも測定温度指示値が徐々に上昇してしまうなど様々な問題が発生する可能性があります。
そのようなことを防ぐために耐熱ジャケットや水冷ジャケットを用いて対策します。
水冷ジャケットは流す水温にも左右されますが、100℃以上の雰囲気でも使えるように設計されています。ただし水を用意する必要や、結露対策のエアーを流す必要もありますし、水漏れの懸念もあります。対して耐熱ジャケットの場合は水を流すことがありませんので運用は非常に簡単ですが、耐熱温度が水冷ジャケットと比較してあまり高くないものが多く、サイズも大きく重くなる傾向があります。
放射温度計のメンテナンス
■清掃と定期的な点検
1.レンズ部分はやわらかい清潔なウエスか綿棒の先をほぐしたものでレンズに傷がつかないように清掃してください。
酷い汚れの場合は無水アルコール(エタノール)をウエスか綿棒の先端に浸してレンズを清掃して直後に乾拭きをしてください。
特殊なコーティングをしている場合がありますので各メーカに相談してください。
2.一年に一度程度は校正をして温度にずれがないか点検することを推奨します。
各メーカに相談してください。
『放射温度計の精度を徹底解説!』のまとめ
- 放射率を設定するには正しい方法で導き出すこと
- 測定対象物や加熱方法によって測定波長を選択すること
- 標的サイズは測定面の二分の一以下、曲面の場合は三分の一以下を選定すること
- 照準は標的サイズと同光軸のものを選定し、測定対象物の大きさや色によってレーザ照準やファインダタイプなどを選択すること
- レンズの保護を中心にできるだけ汚れない・傷をつけないよう気を付けて必要な場合はアクセサリなどを使って対策すること
- 困ったときに相談できるメーカーを探しておくこと
この記事の執筆者
計測器業界において20年以上の経験を有し、特に放射温度計の販売において自動車関連企業を中心に実績を積んできました。現在は、営業プロセスの改善と標準化を推進するとともに、販売促進活動やコンテンツ作成など、多岐にわたる業務を担当しています。
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