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赤外線、黒体、放射率について

赤外線について

赤外線とは、波長が可視光線より長くマイクロ波よりも短い、およそ0.78μm 近辺から1,000μm 近辺までの電磁波の一種です。波長によってさらに、近赤外線、中赤外線、遠赤外線に区分されます。

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放射について

放射とは、物質が原子の振動により赤外線エネルギーを周囲に放出する現象のことで、地球上のあらゆる物体は、絶対零度より高い温度であれば例外なく赤外線を放出しています。

物体からの放射は温度が高いほど多く、放射される赤外線エネルギーの量は温度の4乗に比例します。

赤外線の「吸収」「反射」「透過」

全ての物体は赤外線エネルギーを放射していますが、外部からの赤外線エネルギーも「吸収」「反射」「透過」をしており、入射= 反射+吸収+透過 の式をエネルギー保存則といいます。

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物体が赤外線を吸収すると温度が上昇し、放射すると温度が低下します。
温度が一定の「熱平衡状態」では、赤外線の放射と吸収は同じ量となり、「放射=吸収」であることを「キルヒホフの放射法則」といいます。

完全黒体とは?

全ての光を吸収する物体を「完全黒体」と呼びます。逆に自らはまったく放射せず、周囲からの熱放射を完全に反射する物体を「鏡面体」と呼びます。

熱平衡状態では赤外線の放射量と吸収量は同じであり、赤外線をよく吸収する物体ほど、より赤外線を放射します。完全黒体は全ての光を吸収するので、同じ温度の物体と比べると、放射する赤外線の量は最も多くなります。

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完全黒体の温度と赤外線放射量

完全黒体が放射する赤外線の量は、光線の波長と温度の関係によって決まり、これを「プランクの放射則」と言います。

下のグラフでは「6000K」「3000K」といった数値が温度を表し、グラフの横軸は光線の波長を表しています。縦軸は光の量(放射量)を表し、上になるほど量が多くなります。

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このグラフから、温度が高くなるほど多くの光を放射していることがわかります。
温度が1000K になると可視光線を放射するようになり、赤く光って見え、さらに温度が上がるにつれ、短い波長の光を放射するようになります。

このグラフより、赤外線の放射量がわかると、完全黒体の温度が求められることがわかります。

放射率とは?

放射率とは、物質の表面から赤外線エネルギーを放射させる度合いを数値化したものです。
鏡面体の放射率は「0」、完全黒体の放射率は「1」となります。

あらゆる物体は、放射率が0 から1 の間にあり、同一物質でも表面が粗いと放射率は高くなります。放射率は一般に、ε(イプシロン)で表記します。

放射温度計での温度測定では、放射率を設定することが必要となります。

なぜ放射温度計には放射率の設定が必要なのか?

放射温度計は物体から放射される赤外線の量を温度に換算し測定しています。

その換算式は、入ってくる赤外線を100%吸収し100%放射する理想的物体 = 完全黒体をベースにしています。

この状態を放射率1.0としており、吸収も放射も全くしないものが放射率0となります。

しかし、自然界にはこのような物体はなく、赤外線の一部は表面で反射し吸収されません。また、物体によっては赤外線を透過してしまうものもあります。したがって実際には同温度の黒体よりも少ない赤外線しか放射されません。

当然、放射温度計に入ってくる赤外線も完全黒体よりも少なくなるため温度表示も低くなります。

そこで同温度の黒体と比較して、どの程度放射エネルギーが少ないのか知り、 それを放射温度計に設定する必要があります。

どの程度放射されているかにより放射率0~1.0の間の値に設定します。その設定値は材質や表面状態、形状、温度によって様々です。

主な物質の放射率

物質 表面状態 放射率(ε)
代表値 範囲
金属 アルミニウム 研磨面 0.05 0.04 – 0.06
アルマイト処理面 0.8 0.7 – 0.9
黒色アルマイト 0.95 0.94 – 0.96
機械加工面 0.07 0.02 – 0.04
酸化面 0.7
研磨面 0.03
金メッキ面 0.3
半田メッキ面 0.35
銅線 φ1.2すずメッキ銅線 0.28
φ1.2ホルマル銅線 0.87 0.87 – 0.88
研磨面 0.66
非金属 アルミナ 0.63 0.6 – 0.7
プリント基板 エポキシガラス、紙フェノール 0.8
テフロンガラス 0.8
部品 厚膜IC Pd/Ag 0.26 0.21 – 0.4
誘導体 0.74
抵抗体 0.9 0.7 – 1.0
抵抗器 購入状態 0.875 0.8 – 0.94
コンデンサ タルタルコンデンサ、電解コンデンサ 0 0.28 – 0.36
その他のコンデンサ 0.92 0.9 – 0.95
トランジスタ 黒色塗装 0.85 0.8 – 0.9
金属ケース 0.35 0.3 – 0.4
ダイオード 0.9 0.89 – 0.9
IC DIPモールド品 0.85 0.89 – 0.93
トランス・コイル パルストランス、ピーキングコイル 0.9 0.91 – 0.92
平滑チョーク 0.9 0.89 – 0.93
塗装 黒ラッカー 0.9 0.87 – 0.95
自然乾燥エナメル 0.88 0.85 – 0.91
ガラス・ゴム・水 等 0.9 0.87 – 0.95

一般的にゴムやセラミックなどでは放射率が高く測定しやすいですが、 金属等の表面に光沢がある物は放射率が低くなる傾向にあります。

ジャパンセンサーでは、被測定物体の放射エネルギー量を高め、高温域での波長を全波長均一にする高温耐熱塗料「黒体塗料JSC-3号」を販売しております。スプレー缶で簡単に塗布できます。

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